「憲法九条の会・生駒」お知らせ 2015年8月25日号


憲法九条の会・生駒」お知らせ 2015年8月25日号
 
・・・(憲法9条に係わる最近の動きから)・・・
大阪市東大阪市など育鵬社採択の暴挙!
何というこのひどいやり方!
 
 来年度から4年間使用される中学校教科書採択で、生駒市奈良市など奈良県下の教育委員会は、歴史・公民で育鵬社(過去の戦争は侵略ではなく、列強からアジアを解放した正義の戦争、という靖国史観の立場。これも文科省検定教科書)を採用していませんが、大阪市はこのたび初めて採用を決定(129校)しました。
大阪市の採択会議で、歴史と公民の審議には2時間半かけられたが、そのうち大森教育委員長が60分、高尾教育委員が35分も自己の特殊な歴史観を延々と演説し、育鵬社が採択されるように予めシナリオが作られていました。その会議の様子は、

下記↓「何とひどい!大阪市の教科書採択の経過」をご覧ください

 
なんとひどい!大阪市の教科書採択会議の経過
 
(ある傍聴人の記録)
 
大阪市教委・教科書採択会議を傍聴して
教科書採択がこんなにも虚しいものだとは……
 
 8月5日(水)午前、大阪市教委の教科書採択がありました。私は「子どもたちに渡すな!危ない教科書 大阪の会」の一員として会議を傍聴し、路上で抗議行動を繰り広げる仲間たちのためにLINEで実況中継をしました。
 採択の内容はみなさんご存じの通り、歴史・公民ともに育鵬社でした。その結論は、すでに予想されていたことではありました。大阪の会ではこれまで数度、大阪市教委と交渉し、高尾教育委員を採択から外すように訴えてきましたが、その時の交渉の感触が「あ、これは育鵬社で決まっているんだな」と思わせるものだったからです。

 高尾教育委員はフジサンケイグループの役職を歴任してきた人物であり、育鵬社はいわずと知れたフジサンケイグループの100%出資会社。高尾委員が利害関係者であることは火を見るより明らかです。しかもこれまで、育鵬社教科書の共同発行者である教育再生機構の機関誌に少なくとも4回寄稿し、「私たちは採択地区を大阪市全体の1地区とすることにしました」と自慢までしています。このような育鵬社という一教科書会社の利益を代弁するような人物が教育委員をしていること自体驚きなのに、大阪市教委は高尾教育長をかばい続けました。なんでも教育委員会事務局によれば、高尾教育委員が「教育再生」に寄稿したことは、「軽率ではない」そうです。こんなあからさまな利益誘導をしておいて、軽率ではないと?!

 驚きはそれだけではありませんでした。大阪市教委は採択会場を2日前まで明らかにしてこなかったのですが、あろうことか傍聴者を採択会場に入れないことを決めたのです。採択会場は西長堀大阪市立図書館内の会議室で、傍聴会場は弁天町の大阪市教育センター。マスコミは入れるけれども、傍聴者は遠くでネット中継を観ておけという具合です。名目は「静謐な環境を保つため」だそうですが、こんな教科書採択など、前代未聞です。

 もし育鵬社を採択するのでなければ、このような傍聴会場の措置は不要だったでしょう。逆に言えば、傍聴人を排除したことが、育鵬社を採択する意志の表れでもありました。
 
 8月5日は、社会科教科書だけの採択です。社会科の教科書採択だけで1日(正確には午前の半日)会議日程を確保するのも異例のことです。それは大阪市教委のポーズなのだろうと、私は思っていました。「高尾教育委員が利益誘導した訳じゃないですよ。ほら、ちゃんと時間を取ってシッカリと審議したでしょ?」と。それは多分、正解です。でもそれを認めるには余りにもお粗末な、とても教科書採択について議論したと言えるような内容ではなかったのです。
 
 採択会議は9時30分から13時までの3時間半。そのうち歴史と公民に費やされた時間が2時間半。その大切な審議時間のうち、高尾教育委員は35分、大森教育委員長は60分も、延々と独演を続けたのです。それも教科書採択とは余り関係のない、自己の偏った歴史観共産主義への憎悪ばかりを、ただひたすら。
 高尾委員は「歴史はカオスだ」と語りだし、唖然とさせられました。どうやら「歴史は多様な見方が出来る」
ということがいいたいようなのですが。そもそも歴史とは権力者の所有物だったものが、当時の農民や商人、あるいは日本人以外の民族をも考察することによって多様性を獲得してきたという経過があります。「単一の歴史観は歴史に対する暴力」といいながら、天皇制史観というべき戦前の単一な歴史観に引き戻そうとするのですから、論理が破綻しているとしかいいようがありません。そして話は脱線していき、「千島列島は日本の領土」「原爆投下はアメリカの世界戦略が原因」「ポツダム宣言を黙殺するべきではない」……挙げ句の果てに坂本龍馬暗殺とか……何が言いたいのかどんどん分からなくなっていきます。それが教科書採択となんの関係があるのでしょうか?

 また公民教科書の議論でも高尾委員は、「育鵬社は外国人や部落差別を様々な形で取り上げており、世界の人権問題の視野が広い」と、事実とは全く真逆の発言もしています。

 しかし、高尾委員よりも輪をかけてひどかったのが、大森教育委員長です。「20世紀最大の惨禍が共産主義。ナチズムや戦争よりも共産主義の方が惨禍だった。なぜ戦争は断罪されるのに、共産主義は断罪されないのか」「歴史学会は政治的でマルクス主義歴史観にのっとっている。マルクス主義こそ不寛容であり、独善だ」等と、共産主義に対する敵意を執拗に繰り返しました。ご自身の思想信条は勝手ですが、教科書採択の議論でそればかり繰り返すのは、あまりにもおかしすぎます。

 そして公民の教科書採択では「個人的に」各教科書の評価を行っていましたが、全16項目の評価の観点のうち、安全保障に関するものが3項目、資本主義の優位性についてが2項目、フランス革命の負の側面が1項目、共産主義の惨禍が1項目という、とても偏った評価の観点で点数づけされており、そのため育鵬社が14点に対して東書がマイナス19点という、やはり恣意的に偏らせた結果になっていました。
 私はこのふたりの退屈な独演会を聞いていて、なんだか虚しくなりました。ここにいる5人の教育委員達のうち、誰も子どもに向き合っていないことは明らかです。大阪市の中学生にとってどの教科書が一番いいのかということは、誰も口にしなかったからです。教育論すらありません。ここにいる教育委員は、政治には興味があっても、教育には興味がないのです。子どもには興味がないのです。私はその事実に怒りを通り越して、あきれ果て、虚しくなってしまったのです。
 この会場で傍聴するまでは、私は怒り心頭でした。これまでの経過から育鵬社が採択されるのは間違いないと思っていましたし、大阪市教委のこれまでの態度や、育鵬社教科書と現在の安倍政治との連続性など、とにかく怒っていたのです。しかし、密室でたっぷり時間をかけて採択するのだから、考え方は違えど大阪市教委の「誠意」で、それなりの「理由」をもって採択するのではと、ひょっとしたら私は期待していたのかも知れません。
それは全く裏切られました。このような独演会は、もはや教科書採択の体さえなしていません。人の話を聞かず自己満足に終始し、傍聴者を最初から排除した芝居など、「茶番」の名すら値しません。もしその場での傍聴が認められていたら、きっと多くの人がキレて抗議し、退席させられたことでしょう。それほど無意味で、我慢がならない会議でした。
 結果は、歴史の教科書は育鵬社4票、帝国2票で育鵬社、公民は育鵬社4票、日文2票で育鵬社でした。しかし議論の過程で対立らしい対立はなく、むしろ全員一致で育鵬社を採択をしないために仕組まれた出来レースのようでした。
 こんな決め方をされてあんな教科書を使用させられる子どもたちの心情を思えば、とても我慢がなりません。
 
 会議終了20分前に、大森教育委員長から緊急動議がありました。(会場には大森発言とともにペーパーが配られていきます。呆れるほどの出来レース。)社会科が政治焦点化しているから、多角的に学ぶという意味で、教科書を複数使用してはどうかと提案したのです。これはあからさまな利益誘導をしたことに対する批判を避けるために行った措置であることは明らかでした。私たちが一生懸命働きかけてこなければ、このような展開もなかったでしょう。

 これに対し、大阪市教委(事務局)は「教育効果を十分に理解できる」と答弁し、「制度的にも経済的にもおかしい」と主張した帯野教育委員を除く5人の教育委員がこれに賛成しました。予算措置が伴うためか「付帯決議」という形でまとめられ、歴史は帝国、公民は日文の教科書が補助教材として使用されることになりました。
 子どもたちに渡るのが育鵬社教科書だけではないということに、正直いえば一瞬ホッとしました。そしてすぐに、そんな自分が腹立たしくなりました。
 もし育鵬社教科書だけが使用されるのであれば、「育鵬社教科書を使用するな」と働きかけを始めたでしょう。そこには当然、補助教材として別の教科書を使用することも選択肢のひとつとしてあるはずです。
 しかし、やはりこれは筋が違います。大森教育委員長がいった「多角的に学ぶ」というのは、それも含めて一冊の教科書に記述されているはずです。そしてもし「多角的に学ぶ」のであれば、日本軍「慰安婦」問題や強制連行についてシッカリと記述された教科書を使用するべきです。そしてそれ以前の問題として、「多角的に学ぶ」にしても育鵬社の教科書は危なすぎます。
 そもそも育鵬社教科書を採択しなければ、こんな無駄な予算を使う必要もないのです。
 
 このような無意味な採択を許せるはずがありません。こんなしょうもない政治談合とあからさまな利益誘導のために、子どもたちを犠牲にはできません。
 これからの4年間、大阪市教委が行った理不尽を糺していき、子どもたちに教育を取り戻す闘いを開始したいと思います。

(資料)育鵬社採択は増えている

中学校歴史分野で育鵬社版が全国で採用された比率は、2009年で0.6%だったのが2011年で3.7%(約6倍に増加)に、公民分野では2009年0.35%だったのが2011年は4.0%(約11倍に増加)に急増していました。(いずれも教科書の部数%、2011年で歴史・公民とも全国で約5万部) 特徴は、現場の声を無視し、首長による教育委員任命を通じて、教育委員の意向のみによる採択が強化されていることです。

今回2015年の採択で、右翼団体日本教育再生機構」は2011年の倍増、即ち10万部の採択をめざす、と宣言し呼びかけていました。これが今回の採択で新たに、大阪市四条畷市泉佐野市、河内長野市(公民のみ)が増えました。大阪市は学校数が129校もあり、部数が急増します。一方、東京都大田区は前回育鵬社採択だったのが、今回歴史・公民とも東京書籍を採択しました。
 また東大阪市では、4年前に公民のみ育鵬社を採択していたが、今回教育委員会の諮問機関である教科書選定委員会が答申した各教科3社の中に育鵬社は入っていなかったにもかかわらず、教育委員の「保護者から現行教科書を使ってほしいとの意見があった」という意見で強引に押し切られ、育鵬社を採択したのです。諮問機関の答申無視という民主主義を否定する独善的な運営のレールは予め引かれていたのです。

 なお、河内長野市四条畷市泉佐野市も、今回初めて育鵬社を採択しました。

● 育鵬社採択の意味するもの
これらの動きは、安倍政権の戦争法案強行の動きに呼応した、戦争する国づくりの一環として、いかに教育を重視しているかの現れです。教育基本法改悪(愛国心導入)、教育委員会制度改悪(教育長権限強化)、教科書検定制度改悪(国の方針に沿った内容の教科書へ誘導)の流れの上にあり、全国で育鵬社採択の圧力を強めています。最近文科省は、国立大学にまで日ノ丸掲揚・君が代斉唱を実施するよう指示を出しています。戦前の軍国主義化がそうであったように、戦争への道と教育反動化は一体のものです。


● 墜落米軍ヘリ 対テロ訓練中 陸自特殊部隊員が同乗 戦争法案を先取り
8月12日、沖縄うるま市沖で墜落した米軍ヘリに乗りこんでいた陸自隊員2人(事故で負傷)は、防衛相直属の中央即応集団所属の2等陸曹で、同集団のなかでもテロリストの攻撃などに対応する特殊作戦群の隊員であることがわかりました。こういう隊員が米軍の特殊作戦の訓練に日常的に参加している実態が、この事故で浮き彫りになりました。自衛隊が米軍と一体になって戦争に臨む「戦争法案の実像」が見えます。
 
 若者デモ、32都道府県に広がる
「戦争したくなくてふるえる」(北海道)、「SPADA」(秋田)、「NDC」(新潟)、「WDW@熊本」(熊本)、「N-DOVE」(長崎)など、各地で学生・若者たちが自発的に呼びかけて、戦争法案に反対するグループが次々に生まれています。シールズは毎週金曜日に国会正門前で抗議行動を続けて、全世代から万単位の人を結集しています。関西と東北でも結成され、15日には沖縄でも結成されました。高校生も8月2日、渋谷で5000人を集めてデモをしました。
 
● 18歳選挙権 自民党「提言」の危険な中身
来年の参院選から実施される18歳選挙権に関して、自民党は安倍首相に「提言」を提出しています。「学校における政治的中立性の確保」として9事例を提示し、高校生の政治活動は「学校内外で生徒の本分をふまえ基本的に抑制的であるべきとの指導を高校が行うように」、「政治参加に関する教育を抜本的に充実」として、新科目「公共」の創設や、学習指導要領の抜本的改定の推進などを示し、「高校生が一党一派に偏った政治的活動に巻き込まれることとは峻別する必要がある」と指摘、政治的活動とは一線を画すような指導が必要としています。さらに、教員に関して「政治的行為の制限違反」への罰則に言及、教員の「偏向を防ぐ具体的手だて」の確立を求めています。さらに「政治的中立性の確保」を理由に教職員組合の収支報告を義務付けることを求めています。
 
 8月22日、奈良公園で戦争法案反対市民集会に2500人
 8月22日の午後奈良公園で、奈良弁護士会主催の、戦争法案廃案を求める市民集会『それ、憲法違反です!』が開かれ、奈良県史上最高の約2500人が参加しました。集会後、大宮通りや三条通りなど、JR奈良駅までの往復2.8kmをパレードし、市民に廃案を訴えました。
 奈良弁護士会の児玉会長は、挨拶の中で「弁護士会というのは強制加入団体であり、まったく多様な考えの者が集まり、支持政党もバラバラ。それでも集会が実現したのは、法案が憲法に違反しているから。立憲主義、平和主義、国民主権、個人の尊厳などが否定されるという危機感があった。いま声をあげないと、自由に発言できない社会がくるという危機感がある。」
 政党代表は、民主党日本共産党社民党新社会党が挨拶し、参加者を激励しました。憲法学者からは丹羽徹龍谷大学教授、宗教界からは浅川肇もと談山神社神職が挨拶しました。
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8/22 奈良公園2500人参加
こちら→共同センターの記事へ



● 生駒市奈良市育鵬社を採択せず
 生駒市は8月10日、奈良市は8月4日に教科書採択会議を開き、来年度からの中学校歴史と公民はいずれも東京書籍と決定し、育鵬社は採択されませんでした。憲法九条の会・生駒は6月3日、市教委に対し教科書採択は公正に行うよう申し入れていました。また6月24日、図書会館での教科書閲覧には多数の市民が参加し、育鵬社を採択しないよう、多くの意見を市教委に提出していました。
 

● 生駒で10団体が共同して戦争法案反対を訴え、市内に宣伝カー走る
 「憲法改悪許さない生駒共同センター」は市内の14団体に呼びかけ、うち10団体が集まって、共同して戦争法案反対行動を強めようと、以下の4点を申し合わせました。① 8月22日の県庁前集会には最大限取り組む。② 11日と13日に生駒駅前で各2時間、合計4時間の署名・宣伝活動を行う。③ 12日に、市内全域に2台の宣伝カーを走らせ、市民に訴える。④ 30日の全国統一行動には最大限参加する。国会前集会には可能なかぎり代表派遣する。
 これを受けて11日と13日は、生駒駅前で合計4時間にわたり活発な活動を展開し、2日間の合計でのべ96名が参加し、戦争法案反対署名は410筆、配布した22日集会のちらしは850枚です。通行人から飛び入りスピーチやカンパ2千円がありました。また2台の宣伝カーは合計10時間走行して市民に訴えました。

 
 
◎みなさんの、「憲法九条の会・生駒」への賛同募金をお待ちしております。
「郵便振替口座 00930-9-278631 憲法九条の会・生駒」へお願いします。
 
・・・・・・こ れ か ら の 予 定・・・・・・
・8月30日(日)戦争法案反対全国統一行動;14時半から生駒駅署名宣伝、続いて16時からJR奈良駅前集会又は大阪扇町公園集会に参加しましょう。東京では10万人が国会包囲。

・9月6日(日)第10回鹿ノ台校区平和のつどい(13:30 鹿ノ台ふれあいホール大集会室)
・9月9日(水)核廃絶署名(11:00生駒駅)戦争法案反対ロングラン署名宣伝行動(13~15時 生駒駅

・9月14日(月)戦争法案反対ロングラン署名宣伝行動(13~17時 生駒駅
・9月17日(木)戦争法反対奈良県民大集会(18:30 近鉄奈良駅行基前、主催憲法奈良県共同センター)
 
 第132回 運営委員会(憲法生駒共同センターと合同会議)
      2015年9月9日(水)15:30~17:00 於たけまるホール研修1
当会は運営委員を決めていません。
当日参加された会員(1日運営委員)で構成しています。
お時間が許せばご参加賜りたく、ご案内申し上げます。

   

 

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