福島県9条の会「福島第1原発の『巨大人災』にあたって

福島第一原子力発電所の『巨大人災』にあたって
福島県九条の会は、東日本大震災で犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、過酷な境遇におかれている地震津波、ならびに原発事故の被災者に対して、心からお見舞いを申し上げます。
とりわけ、原発『巨大人災』に関して、県九条の会としては、これを会の設立趣旨外の出来事と傍観者を決め込むわけには参りません。私たちは、日本国民がこれまで経験したことのない原発事故によって、ふるさとの町や村を追われ、日夜放射線による生命と健康の危険に怯えながら、日常的な生活を破壊されて、劣悪な環境のなかで避難生活を送っている人々を、身近に見ています。また、被災地九条の会の少なからぬ構成員が、その当事者になってもいます。私たちは、地元の会として、この悲惨な現実から眼を逸らすことは出来ません。
それだけではありません。日本国憲法九条が依拠する「平和的生存権」=「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」の侵害という根本的次元で、戦争の惨禍と原発『巨大人災』とは共通のものがあります。それどころか、「安全神話」を振りまいて原発路線を突っ走った利権絡みの原発利益共同体と、日本を再び「戦争のできる国」にしようとたくらむ改憲推進共同体とは、人的にも思想的にも太い地下茎で繋がっており、同じ土壌に根をおろしているのです。
私たち福島県九条の会は、こうした状況を踏まえ、さしあたり、次のことを求め、その実現のために力を尽くす決意です。
一、県民の生命と生活の危機の回避と、侵害された人権および日常の一刻も早い回復。とくに、こどもなど被曝弱者のいのちと健康を護る施策の早急な実施。
一、東京電力および国による、県民がこうむった被害の迅速かつ全面的な補償。
一、県復興ビジョン検討委員会が提起した「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会づくり」という基本理念の堅持と具体化。
一、原発事故にいたる歴史的経緯の客観的な検証と、その社会的責任の所在の徹底的究明。
福島県九条の会は、九条を護り生かす活動を基本としながらも、右の目標達成のため、志を同じくする県内外の諸団体と連携して、行動したいと思います。県内各地の九条の会も、相互に連絡を密にして、これらを実現するため、創意ある取り組みを組織されるよう期待します。
最後に、被災者のふるさとへの帰還と、被災地九条の会の再建とが一日も早いことを願うものです。
二〇一一年七月一一日
福島県九条の会